Healing room 3

日記、および公開ラブレター!

死者の目となる/写真集『マリイ』

松岡一哲さんの写真集

『マリイ』の写真展に

行ってきました。

 

『マリイ』は

500ページ越えという

圧巻の写真集で、

 

この時代に

この写真集が

出版されたということが

 

芸術や出版の歴史にとって

どれほどのことなのかを考えると

背筋がゾワゾワするような

興奮をおぼえますし、

 

それを買うという行為にも

とても昂揚しました。

 

写真のこと

すごく興味があった

わけじゃないので、

 

わたしがなにか語るのも

気が引けてならないのですが

 

『マリイ』という

写真集をみてから

あとからあとから

湧いてくる気持ちが

あって、

 

今日はそれを

感想として

書けたらと

思っています。

 

 

この写真集は

500ページもあります。

 

時に、

なにもわからない

わたしでも震えるほど

写真的価値を感じる

ようなものもあれば、

 

そのページがある意味が

よくわからないような

ものもある。

 

「ここに写っているすべてがマリイです」

という一哲さんの帯文の通り、

 

すべての写真の中心は

一哲さんの妻のマリイさんで、

 

それがグイグイと

ページをめくらせます。

 

一哲さんの写真を

このボリュームで

みるということは、

 

わたしにとっては

いろんな判断を手放す

という行為でした。

 

 

ときどきハッとするほど

美しい写真が現れて、

 

ピンぼけの写真が現れて、

 

様々な色と質が現れて、

 

マリイさんが現れる。

 

 

一哲さんのインタビューで

「(写真を撮るときに)自分などない」

といった発言がありましたが、

 

一哲さんの写真には

驚くほど写真家としての

圧がありません。

 

でも消えても消えても

一哲さんはある。

 

 

思い出したのは、

 

夫の実家の岡山に

帰省したときのこと。

 

団らんのような

夏の夜のひととき、

 

気持ちがよさそうな

風を感じて、

 

わたしだけ窓を開けて

テラスのある外に出ました。

 

涼んだのはほんの

少しの時間でしたが

 

部屋に戻ろうと振り返ると

 

レースのカーテン越しに

家族の風景があって、

 

楽しそうだけど

そこに自分はいない感じや

 

レースのカーテンが作る

淡い境界の外側に自分がいる感じ、

 

その不思議な感じは

 

自分が死んでる人として

その景色を見ているようだった。

 

ただ愛おしく外側から

観察するような気持ち。

 

『マリイ』をみていると

このときの気持ちを思い出す。

 

 

もうひとつ

個人的なことですが、

 

この写真集をみる前に

 

わたしはある決断を

しようとしていて、

 

今思えば

ちょっとヒロイックにも

なっていた気がするのですが、

 

この写真集をみたあとに

思ったのは、

 

「どっちでもいい」

ということでした。

 

そうしたかったら

そうしてもいいし、

 

そうじゃなくてもいい。

 

正しい正しくないが

あるのではなく、

 

ただ自分の識別がある。

 

選んでいい自由がある。

 

 

美しいものは美しいし、

ダサいものはダサい。

 

でもそれはどっちでもいい。

 

 

価値は正しさじゃない。

 

とか書いてることも

実はどっちでもいい。

 

 

とにかく本当は

どっちでもよくて、

 

その存在の価値は

いつも変わらない。

 

 

ただ識別と

そのままの価値だけが

あるとして、

 

でもわたしたちには

いつもどうしても

他者が必要で、

 

それが一哲さんには

マリイ。

 

 

ってとこまで

書いたとしたら、

 

これ以上書くのは

野暮中の野暮な

気がするので、

 

あとは

本物の『マリイ』を

みてください!

 

 

http://healingroom3.com

 

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写真展『マリイ』森岡書店(銀座)は13日まで開催だそうです!

 

  

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奥の大きなプリントがすばらしかったです。

 

森岡書店の「一冊の本を売る」というコンセプトにも感動しました。ギャラリーのような、サロンのような場所。

「日本工房」という編集プロダクションが入っていたという歴史あるビルであるということの必然にも驚く。

 

銀座、数年働いていた場所を通ったりしてなつかしかった。

 

 

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出版物としてまちがいなしにハイエンド。

 

作品としての波動的にも、印刷、製本などの技術的にも、この写真集を実現させるために関わったみなさんのマインド的にも。

 

言語化不可能な精妙なものを、みんなが大切に大切に扱って、この本ができあがったのだと思う。

 

この時代に…

 

崖から叫びたいほどの感動。

 

わたしはエムエムブックス限定版で。